くらし支える相談センターのブログ

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一定期間の特例措置として、生活保護制度の運用を緩和し、積極的活用を求める日弁連会長声明

新型コロナウイルスの感染拡大が収束するまでの一定期間の特例措置として、生活保護制度の運用を緩和し、同制度の積極的活用を求
める会長声明
https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2020/200507_4.html

政府は、本年4月7日、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、7都府県を対象に緊急事態宣言を発出し、同月16日にはこ
れを全国に拡大、5月4日には同月31日まで延長した。これに伴い、営業や外出の自粛が要請されることによって、仕事と収入の減
少又は喪失に見舞われ、生活困窮に陥る人々が増え始めている。仮に緊急事態宣言が終結しても、営業や外出の自粛が引き続き求めら
れるであろうことからすれば、今後、時間の経過とともに生活困窮に陥る人々が爆発的に増えることも予想される。
こうした生活困窮に対応するのが生活保護制度であるが、我が国の生活保護制度には、厚生労働省が発出する通知(保護の実施要領)
により、厳しい資産要件や扶養義務者に対する調査等、利用に当たっての高い障壁がある。既に厚生労働省は、緊急事態宣言発出後、
稼働能力活用要件の判断を留保し、就労・自営収入減少者に対する増収・転職指導を停止する等、運用を緩和・改善するいくつかの事
務連絡を発出しており、それ自体は評価することができる。しかし、目下の非常事態への対応策としては、いまだ部分的な改善にとど
まると言わざるを得ない。
一時的な所得保障さえあれば急場を凌ぐことができ、感染拡大収束後には元の生活に戻れるであろう多くの人々の生活基盤を確保する
ためには、目下の特異な状況下における特例措置として、先に述べ生活保護利用上の各種障壁を一時的にせよ思い切って緩和するこ
とが有益であり、必要である。それは、平常時においてさえ人員不足である福祉事務所職員の更なる事務負担を軽減するとともに、職
員及び要保護者の感染拡大を防止しながら、迅速な決定で生活困窮者の生活を支えることにもつながる。
そこで、当連合会は、厚生労働省に対し、生活保護制度の誤解や偏見を払拭し、その積極的な利用を促すための広報をすることを求め
るとともに、新型コロナウイルスの感染拡大が収束するまでの一定期間中の特例措置として、以下の諸点において、生活保護制度の運
用を抜本的に緩和する厚生労働省通知を発出し、それによって、同制度の積極的活用を求めるものである。
1 面接相談窓口の負担軽減、感染拡大防止、給付の迅速化のため、持続化給付金等と同様に、ウェブ申請を可とすること。
2 緊急事態宣言期間中及び終了後一定期間は、生活保護法4条3項の「急迫した事由」が認められるものとし、収入基準の審査のみ
で保護の要否判定を行うこと。
3 その場合、保護開始時の現金・預貯金は最低生活費の5割しか認めない運用を改め、少なくとも最低生活費3か月分までは保有
認めること。
4 厳格な要件下でしか自動車の保有を認めず、保有を認められた失業・休業者についても求職活動等に必要な場合しか使用を認めな
い運用を改め、原則として自動車の保有及び使用を認めること。
5 住宅ローンを負担する者に対する保護の適用を原則として認めない運用を改め、ローンの支払が繰り延べられている場合に準じ
て、住宅ローンを負担する者に対しても保護の適用を認めること。
6 一定の在留資格を有する外国人についてのみ生活保護法の準用を認める運用を改め、母国に容易に帰国できない状況等に鑑み、在
留資格の有無・内容にかかわらず同法の準用を認めること。
7 扶養義務者に対する調査は、急迫事由が止んだ後に行うものとし、「明らかに扶養義務の履行が期待できない者」についてのみ扶
養義務者に対する調査を省略する取扱いを改め、「明らかに扶養義務の履行が期待できる者」についてのみ調査を行えば足るものとす
ること。
8 住居のない要保護者について、無料低額宿泊所等の集団処遇施設に入所させることを原則とする運用を改め、生活保護法30条1
項のとおり居宅保護を原則とし、居宅確保までの一時的居場所としても、一時生活支援事業に基づく契約ホテル等の個室提供を原則と
すること。

2020年(令和2年)5月7日
日本弁護士連合会
会長 荒   中