くらし支える相談センターのブログ

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「教育機会確保法」(義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律)成立

12月7日国会にて「教育機会確保法」(義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律)が成立しました。
全国夜間中学校研究会等夜間中学関係者が半世紀以上にわたり待ち望んできたことであり、画期的な出来事です。
そこで「夜間中学④~教育機会確保法成立」をお送りします。※「教育機会確保法」全文は下記参照
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g19001034.htm

///////// 夜間中学④~教育機会確保法成立 ////////////////

 以下、この法律が成立した道のり・背景、法律の概要、今後の取組のポイントなどについて述べます。
■教育機会確保法成立までの長い道のり
 1954年に開催された第1回全国夜間中学校研究会(当時は「協議会」)は、法制化を求める陳情書を採択しましたが、目的は達成されず、むしろ国は「全国的実態をはっきりとつかんだ上で、解消できるものかどうか検討。場合によっては制度上認めない」
(1963年5月荒木文部大臣・参議院文教委員会答弁)と述べました。1966年には行政管理庁が「夜間中学早期廃止勧告」を出し、全国ではそれに反対して夜間中学増設運動や自主夜間中学の取組が広がり、全国夜間中学校研究会は1976年より毎年「各都道府県に少なくとも1校以上の夜間中学校設置を制度化されたい」等の項目を含む要望書を国等に提出してきました。
  さらに自主夜間中学や弁護士などの協力も得て、全国への夜間中学開設をめざし日本弁護士連合会に人権救済申立おこない、2006年8月に日本弁護士連合会より「学齢期に修学することのできなかった人々の教育を受ける権利の保障に関する意見書」が国に提出されました。「義務教育は全ての人の固有の権利であり、学齢超過か否かに関わらず、義務教育未修了者は国に教育の場を要求する権利をもつ」「国は全国的実態調査を速やかに行い、普通教育を受ける権利の実質保障のため、様々な手段を尽くすべきで
 る」等素晴らしい内容が盛り込まれましたが、全国での夜間中学増設にはつながらず、2009年大会で「議員立法による法的整備」の方針に転換しました。 ※日弁連意見 http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/060810.pdf

議員立法成立の背景は?
 全国夜間中学校研究会の働きかけの中、2012年より超党派の「国会院内集会4回」「公立夜間中学や自主夜間中学の視察3回」「夜間 中学等義務教育拡充議員連盟」結成(2014年4月)、2015年から関係議員により議員立法に関する話し合いが行われてきました。また国会での積極的な動きを受け、文部科学大臣は国会で度々「1県に少なくとも1校の夜間中学設置が必要」と答弁しました。21世紀になり「人口減少社会への移行」「引きこもり100万人と言われる状況」「外国人人口の増加」という新しい社会状況が進んだこと、超党派関係議員の努力、そして全国夜間中学校研究会や自主夜間中学等の長年のねばり取組があり、法律成立に至りました。


■「教育機会確保法」の内容は?
 夜間中学に多少なりとも関わる条項の概要は、以下の通りです。
1条(総則):この法律は、教育基本法及び児童の権利に関する条約等の教育に関する条約の趣旨にのっとり施策を総合的に推進する。
3条(基本理念):夜間中学生等が豊かな学校生活を送り、安心して教育を受けられるよう、学校の境確保が図るようにする。義務教育未修了者は年齢・国籍にかかわりなく教育機会が確保される。
4条・5条・6条:国・地方自治体は「総合的施策策定」「財政上の措置」を行う責務がある。
7条:文部科学大臣は、夜間中学を含めた基本指針の策定と、民間団体等の意見を反映させる義務がある。
14条:地方公共団体は義務教育未修了者に夜間中学等、就学の機会提供の義務がある。
15条及び付帯決議:14条のため都道府県と市町村は、「就学の機会の提供その他の必要な措置に係る事務についての当該都道府県及び当該市町村の役割分担に関する事項の協議並びに当該事務の実施に係る連絡調整を行うための協議会を組織する」義務がある。
 協議会の構成者は、「県知事・県教育委員会」「市町村長・教育委員会」「義務教育未修了者の支援活動を行う民間団体その他県・市町村が必要と認める者」とする。協議会構成者は協議会での合意事項を尊重しなければならない。16条:国は義務教育未修了者等の実態把握、学習活動の支援方法に関する調査研究とそれに関する情報の収集・整理・分析・提供を行わなければならない。
17条:国・地方公共団体は、広報活動等を通じ教育機会確保等に関する国民理解を深めるよう必要な措置をとらなければならない。
18条:国・地方公共団体は、教育機会の確保等が専門的知識に基づき適切に行われるよう、学校の教職員等の養成・研修の充実を通じた資質向上、体制等充実のための学校の教職員配置、心理、福祉等に関する専門的知識を有する教育相談者の確保等を行わなけ
 ればならない。
19条:国・地方公共団体は、義務教育未修了者等に対し、教材の提供(通 信方法含む)その他の措置を講じなければならない。
21条:国・地方公共団体は、義務教育未修了者等や家族からの教育・福 祉等各種相談に総合的に応ずることができるよう、関係省庁相互間その他関係機関、学校・民間団体の間の連携強化、必要な体制の整備に努めなければならない。
付則:夜間中学等に関する第四章の規定は、公布の日から施行する。※したがって

■公立夜間中学・自主夜間中学等関係者の当面の課題
①7条:文部科学大臣の基本方針策定に関連した民間団体からの意見聴取に際し全国夜間中学校研究会等が名乗りを上げること。
②15条:各都道府県及び市町村の「協議会」結成に際し、各地の公立夜間中学研究会や各都道府県の自主夜間中学・夜間中学をつく
 る会・その他の関係者が構成メンバーに入れるよう名乗りをあげること。
③17条:国・地方公共団体に対し具体的な「広報活動」の内容を提案をしていくこと。
④18条:国・地方公共団体に対し、「学校の教職員等の養成・研修」「体制等充実のための学校の教職員配置」「心理、福祉等に関する専門的知識を有する教育相談者の確保等」の具体的方策を提案をしていくこと。
★この法律の「夜間中学条項」に関しては12月又は1月の公布が想定されており、年度内の始動が重要だと思います。「夜間中学新時代」にふさわしい積極的な取組、多様な関係団体・関係者との連携が必須になってくると思われます。