くらし支える相談センターのブログ

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「子どもの貧困対策に関する大阪市への要求」相談会

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「子どもの貧困対策に関する大阪市への要求」相談会
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 ■日時 2017年1月14日(土) 18:30~
 ■場所 エル大阪 南館71号室
            地下鉄谷町線・京阪「天満橋」駅下車7分
 ■主催 子どもに「教育への権利」を!大阪教育研究会
   (参加費無料)
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公教育こそ貧困な子どもの防波堤に!
子どもの貧困対策に関する大阪市への要求(案)

 大阪市「子どもの貧困調査」速報値からも明らかな通り、大阪市の子どもの貧困は深刻です。その中で公教育が果たすべき役割は極めて重要であると考えます。学校は、勉強を学ぶだけの場所ではありません。学校において子どもは社会性を育み、友だちを作り、自己を確立していきます。子どもが学校を楽しい場所と感じ、友だちや教員から認められ、自分の居場所だと思えることが重要です。子どもにとって、社会の多くの部分は学校であり、そこに包摂されることが子どもの貧困対策の大前提となります。いわば、公教育が貧困な子どもたちの防波堤になるべきだと考えています。

 しかし、大阪市は、学校外の「塾代助成」には力を入れる一方、公教育を軽視しています。それどころか貧困な家庭を公教育から排除するような政策を強めています。全国学力テストの学校別正答率の公表や大阪市統一テストの内申書への反映など、「競争」と「自己責任」の教育ばかりに重点が置かれています。私たちは、貧困な子どもを公教育から排除せず、憲法に保障された「教育を受ける権利」を現実化するために、少なくとも以下の施策を早急に実現することを大阪市及び大阪市育委員会に強く求めます。

(1)生活保護、就学援助の支給基準を緩和し、対象者を拡大すること。
 2013年以降、政府は生活保護費の総額をおさえるため3段階で所得基 準(最低生活費)を引き下げ、支給額を減らしてきました。その結果大阪市では生活保護率が(2012年5.71%から2016年4月には5.40%と)約5.2%減少しています。
 大阪市をはじめ27の自治体は、生活保護基準の抑制に連動して就学援助対象を厳しくしました。大阪市では就学援助率が2010年以降減少しはじめ、統計のある2013年までの減少率は約13%にのぼりました。生活保護と就学援助の抑制は、貧困が拡大する大阪では「教育を受ける権利」どころか生存権そのものを奪う行為に他なりません。
 根本的には日本政府による生活保護支給基準の引き下げに重大な責任があります。しかし、政府の引き下げにもかかわらず、多くの自治体が独自の運用で貧困な家庭に生活保護費を支給し続けています。大阪市もできるはずです。大阪市には日本政府に生活保護支給基準の引き上げを要求すると同時に、大阪市の就学援助の支給基準を引き上げるよう求めます。

(2)就学援助費の援助内容を拡大すること。特に中学校給食費の全額保障と入学準備補助金の増額を実現すること。
 大阪市立中学校の就学援助は、給食費を半額しか支給していません。全国的には給食費が全額支給されていることを考えると極めて異例です。また、入学準備補助金は、中学入学時で2万3550円以内(2016年度)となっています。しかし、制服代や体操服代、カバン代など10万円以上かかるケースも増えており、現在の支給額では全く不十分です。大阪市には就学援助費で中学校給食を全額保障し、入学準備補助金を増額するよう求めます。

(3)給食費の完全無償化を実現すること。
 「食」の確保は、貧困問題の中心的な課題です。大阪市の子どもの貧困調査でも「食事を切り詰めた」家庭が約40%に上っています。しかし、大阪市給食費の無償化の方向性をだしていません。それどころか、大阪市給食費未納家庭に対して、弁護士を派遣し回収することを表明しました。弁護士の報酬は出来高制であり、強硬な回収を促すものとなっています。
 2016年3月、政府の経済財政諮問会議では、4人の委員から給食費の無償化が提起されています。2016年に給食費を全額無償化しているのが55市町村にのぼり給食費を部分的に補助する制度を導入しているのが少なくとも396市町村(全1741市町村)ありました(朝日新聞2016年12月19日朝刊より)。
 2016年の内閣府の調査によれば、公立小中学校の給食無償化に必要な財源は、全国の児童生徒約972万人に対して5120億円と試算されています大阪市の公立の小中学生は約18万人(2015年度)です。単純計算する約95億円(中学校での自校方式などでの給食室設備費を省く)で大阪市ので給食費無償化が実現します。

(4)スクールソーシャルワーカーを抜本的に拡充すること。
 学校では、貧困家庭の子どもたちの教育問題や生活課題は、子どもたちの行動となって現れます。大阪市では、学校での暴力行為件数は小学校で全国平均の約2倍・中学校で約3倍、不登校件数は小学校で全国平均の約1.3倍・中学校で約1.6倍(全て2015年度統計)となっています。これらの子どもたちの生活背景はほとんど顧みられず、行動にばかり目が向けられる傾向が強まっています。特に大阪市教委は、「学校安心ルール」と称して「ゼロトレランス(寛容度ゼロ)」政策を推進しています。子どもたちの「問題行動」を5段階に分け、段階に応じた「ぶれない対応」で罰則を科すものです。その結果、本来は支援されるべき子どもが「指導」の対象となり、最終的には出席停止や「個別指導教室」へ排除されることになります。
 今必要なのは、「学校秩序からはみ出る」子どもたちを排除することではなく、子どもを生活者として見つめ、「問題行動」の背景をさぐり、共に考えることです。そのためには、教育と福祉をつなぐスクールソーシャルワーカーの存在が極めて重要です。しかし、大阪市では、スクールソーシャルワーカーの配置が全く不十分です。大阪市教委には、スクールソーシャルワーカーの人数を拡大し、各学校で教職員と連携しながら直接必要な子どもと家庭に関われる体制をつくるよう求めます。


(5)障がいのある子どもの貧困調査を行うこと。
 今回の大阪市の子どもの貧困調査では、障がいのある子どもと家庭の貧困に焦点を当てた調査になっていません。障がいのある子どもの場合、障がいが重ければ重いほど、貧困な家庭ほど、困難が集中し複合化しているのが現状です。近年、子どもの貧困が徐々に「見える化」されてきている中で、障がいのある子どもの貧困の実態はほとんど明らかとなっていません。大阪市は、障がいのある子どもと家庭への貧困調査を実施し、障がいのある子どもと家庭がどのような困難をかかえているのか、今何が必要なのか、早急に検討するよう求めます。

(6)夜間中学での補食給食を復活すること。
 2008年橋下大阪府知事(当時)は、夜間中学校の就学援助と補食給食費用を市町村が負担すべきとしてカットしました。それを受けて大阪市も橋下市長が補食給食を廃止しました。大阪市には、完全無償の補食給食を復活するように要求します。


(7)「子どもの家事業」への補助金を復活すること。
 すべての子どもたちに遊び場・居場所を提供する「子どもの家」事業は、橋下市長(当時)によって2014年に廃止されました。「子どもの家事業」の利用者は0歳~18歳、障がいのある子どもたちも多く、保護者の相談所、なにより様々な課題を抱えた子どもたちの「駆け込み場」でした。多くの貧困層の子どもたちが利用していました。
 大阪市が「子どもの家事業」を廃止したことにより、28カ所あった施設の多くで運営がたち行かなくなっています。大阪での子どもの貧困がますます深刻化する中で、「子どもの家事業」の意義はこれまで以上に高まっています。大阪市には、「子どもの家事業」への補助金を復活するよう求めます。