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生活保護改革2法案の成立に抗議する緊急声明(NPO法人自立生活サポートセンター・もやい)

NPO法人自立生活サポートセンター・もやい」が、「生活保護法の一部を改正する法律案」及び「生活困窮者自立支援法案」の2法案の成立について、緊急の抗議声明を発表しています。
紹介します。

http://www.moyai.net/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=306


2013年12月6日

 

生活保護改革2法案の成立に抗議する緊急声明

 

NPO法人自立生活サポートセンター・もやい
新宿区新小川町7-7アゼリアビル202号室
理事長 稲葉剛


私たちは、国内の貧困問題に取り組むNPOとして、生活困窮された方や社会保障制度を必要とされている方への相談・支援をおこなっています。
本日、残念ながら、「生活保護法改正法案(以下「改正」と称す)」及び「生活困窮者自立支援法案(以下「新法」と称す)」が、国会にて可決・成立しました。
私たちは、年間約3000件のSOSの声を受けてとめている立場として、この生活保護改革2法案について、日本の社会保障の根底(生存権)を揺るがす、戦後最大の制度改悪だと懸念しています。
私たちは両法案の成立に抗議するとともに、各問題点の影響を最小限にとどめるための対策を早急におこなうことを求め、以下に要望します。

1.生活保護法改正法案について

生活保護制度は、私たちの「生存権」を保障する最後のセーフティネットです。しかし、この改正では、「必要な人が利用できる」制度から、「必要な人が利用させてもらえない」制度への変更が提案されています。
具体的には、「申請手続きの変更」として、申請時に「申請書」や「添付書類」を求めることや、扶養調査の権限の拡大などの「扶養義務の事実上の要件化」の2点が挙げられます。
これらは、本来必要な人が制度を利用しづらくなってしまう改正であり、「水際作戦」と呼ばれる、申請窓口でおこなわれる違法な排除の「合法化」とも言えるもので、大きな問題があります。
この改正は、必要な人の利用を抑制し、いのちの切り捨てをすすめる大改悪につながります。

私たちは、これらの問題点の影響を最小限にとどめるため、国の責任において以下の対策をおこなうよう、要望します。

●これまで通り口頭でも申請が可能であることを各自治体に周知徹底する。
●全ての窓口において、誰でも手に取れるところに「申請書」を置くように指導・徹底する。
●過度な「扶養調査」をおこなわないように各福祉事務所に指導・徹底するとともに、適正な運用のためのガイドライン等の作成を、当事者や支援者を含むメンバーでおこなう。
●「水際作戦対策ホットライン」など、福祉事務所の対応について、生活保護利用者や生活保護申請者などが相談できる公的な窓口を設置する。
●当事者・支援者を含む「第三者委員会」を設置し、各自治体の運用をチェックする体制を作る。
●各自治体がケースワーカー(担当職員)の増員をおこなえるよう、財政的な支援をおこなうとともに、専門職の配置や増員をおこなう。
自治体の財政負担の軽減のため、費用負担割合を全額国庫負担へと転換する。

2.生活困窮者自立支援法について


新法は、生活保護の手前に新しい支援制度を作ろうというものです。しかし、その中身は「就労自立(経済的自立)」に特化し、「困っている人を社会的に支える」という当事者主体の立場から、「困っている人に就労してもらう」という「上から目線」の立場へと変化してしまっています。
各事業をみても、対人援助サービスは拡充されるものの、本人への生活保障の制度が「貸付」や「家賃補助」などの限定的なものであったり、いずれも「有期」であったり、利用者が不利益を被った時の救済機能がなかったりと、不十分なものばかりです。
また、新しい相談窓口が稼働層を生活保護にいかせない「沖合作戦」をおこなう可能性や、財源の自治体負担があるため事業実施に地域格差が出るほか、中間的就労などの一部事業はまだ議論が不十分で、他の施策や労働市場に影響を与えかねません。モデル事業等の調査・分析や予算拡大が先決で、恒久法化するのは時期尚早です。

私たちは、これらの問題点の影響を最小限にとどめるため、国の責任において以下の対策をおこなうよう、要望します。

●新しいワンストップ窓口である「自立相談支援事業」が新たな「水際作戦」の場にならないよう、窓口で生活保護等の説明を必ずおこなうことや、申請の意思を確認することを指導・徹底する。
●就労自立という経済的自立の視点だけでなく、社会的孤立などに対する地域のさまざまな取り組みを積極的に支援するような施策を用意する。
●「中間的就労」が、実質的な労働を最低賃金以下でおこなわせる場にならないように、既存の労働市場福祉的就労、社会的就労と、どういった整合性・定義づけにしていくのかを明確化する。
●制度利用者の生活保障のため、経済給付の施策を用意する。
●各事業を「有期」ではなく、必要に応じて期間の定めのない施策として展開できるようにする。
自治体間格差が出ないように、各事業を全額国庫負担にておこなう。
●当事者・支援者を含む「第三者委員会」を設置し、各自治体での運用をチェックする体制を作る。

3.必要な方が支援からこぼれないため


必要な方が支援からこぼれてしまわないためにも、政府は責任を持って、各自治体でどういった「運用」がおこなわれているのか、実態を調査・分析し、適切な支援をおこなうように指導・徹底する必要があります。
また同時に、そういった運用のガイドライン等に関しても、当事者や支援者を交えたオープンな場での議論や意見交換をおこない、自治体の窓口で「水際作戦」や、不適切な対応がなくなるような体制整備をおこなうことが求められます。

両法案ともに、これらの問題点が国会で充分に審議されることのないまま、拙速な議論にて可決・成立してしまいました。これらの問題点が放置されたままでは、生活困窮されている多くの「いのち」が切り捨てられてしまいます。
私たちは両法案の成立に抗議し、両法案の早期の見直しを求めるとともに、政府に対し、各問題点の影響を最小限にとどめるための対策を速やかにおこなうことを求めます。

以上