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無戸籍や子の貧困、憲法の理念実現なお遠く 生存権享受できず 日経新聞

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO09189270U6A101C1CR8000/

 

無戸籍や子の貧困、憲法の理念実現なお遠く 生存権享受できず

 

 日本国憲法は公布から70年を迎えた。生存権を規定した25条は、すべての国民の「健康で文化的な最低限度の生活」を保障し、国がそのための役割を果たすよう義務付けている。だが、家庭事情で出生届が出されない「無戸籍者」や、子供の貧困など生存権を脅かす社会問題はなお横たわる。専門家は「憲法の理念を実現するため支援の充実を」と訴える。

 

 「私はいてはいけない存在なのだと思っていました」。昨年7月まで戸籍がなかった神奈川県に住む女性(34)は振り返る。母は前夫の暴力から逃れ、離婚しないまま父との間に女性をもうけた。民法は「妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定する」と規定する。母は出生届を出せば「前夫の子」となり居場所を知られると思い、届け出なかったという。学校にも通わず「両親が亡くなったらどう生きていけばいいのか」と悩み続けた。母親の離婚が成立した2年前、「民法772条による無戸籍児家族の会」を知り、実父との親子関係を認めてもらう「認知調停」を申し立てるよう助言を受け、戸籍ができた。法務省は2年前に無戸籍者の調査を始めたばかり。10月時点で694人を確認したが、全容を把握できていない。家族の会の井戸正枝代表は「無戸籍者家族の多くはドメスティックバイオレンス(DV)や貧困などの問題を抱えている。行政の目が届かない無戸籍者はもっといるはずだ」と話す。

 

 貧困をめぐる問題も深刻だ。任意団体「大阪子どもの貧困アクショングループ」(大阪市生野区)は、家庭の事情で満足に食事を取れない子供たちを対象に「ごはん会」を開く。2014年の開始当初は月1回だったが、現在は週3回実施。1歳児から高校生まで毎回約20人が集まる。厚生労働省によると、12年の子供の貧困率は16.3%で、子供の6人の1人が貧困状態にある。生活保護を受給する世帯は今年8月時点で163万6636世帯。調査を始めた1951年以降で最多を更新した。さいたま市の解体業の男性(35)は、小学生の時に母親を亡くし、養護施設で育った。読み書きや計算が苦手で、中学卒業後に就職した会社を辞めてから生活保護を受けていた。男性と出会った、生活困窮者を支援するNPO法人「ほっとプラス」(さいたま市)が、男性に軽度の知的障害があることに気づき、男性は療育・援護を受けられる療育手帳を取得、現在の職業に就いた。花園大の吉永純教授(公的扶助論)は「戦後の日本は憲法25条に生存権を明記し、セーフティーネットの整備を進めてきた。だが、近年は生活保護費の給付削減など弱者に厳しい施策が目立つ」と指摘する。今、国会での改憲論議の行方に関心が高まる。だが吉永教授は「今の憲法の理念が実現できるよう力を注ぐ必要もあるのではないか」と問いかける。